ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
それも木の枝で。生きたまま突付くなんて残酷なことを女性はできないだろうから、やっぱり……)
見ているのがつらくなってきた。立ち去ろうと腰を上げると、亀はまだ生きていたのか、足をわずかに動かした。
僕は心底から恐怖した。そのときだった。どこからか女性の笑い声がきこえてきた。振り返り、見上げると、公園内の小高い丘の上に建っている15mほどの高さの展望台の、最上階のテラスに、手すりに体を凭れかからせた女性が、スカートの裾をひらひらさせて、硬そうな物体を地面に向かって投げつけていた。投げ落とされた物はレンガで舗装された道に当たって、かん高い音を響かせ、砕け散った。
上空の風に髪をそよがせている
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