ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
ている女郎蜘蛛の巣がぽつぽつ見え出した。陽の光で目がチカチカした。女郎蜘蛛たちは日差しに照らされ暖かそうだった。やがて、僕の家の屋根が見えてきた。青い瓦の一軒家。さわやかな朝だった。
12 こんな朝は前にも経験がある、……ふ、昔の話さ
(自分ちのマンションが小さく見える。あそこにいま僕はいないんだな。ぐるぐる回ってるからいないんだ。僕は今ここでぐるぐる回っている。降りてはまた金を払い、ぐるぐる回り続けている。
いつまでぐるぐる回っているんだろうか。恐怖も感じる。僕は高い、高すぎるところまできてしまっているから。揺れているし。横に。揺り篭のように。ギシギシと音を立てて。老朽化
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