ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
公園内を歩き始めた。すでに日差しが差してきていた。道を覆うようにたくさん木が立っていて、うじゃうじゃと無数の葉っぱをつけている。そんな中を歩いていった。薄暗く、緑色の苔が地面に繁殖していて、すっぱい匂いがした。だけど、全然嫌な匂いじゃないんだ。すっぱかったけど、新鮮で、すがすがしくって、心が洗われるようだった。こうして多義子と木漏れ日の下を歩いていると、胸がうきうきして、どこか爽やかで、懐かしい感じがした。こんな気分になれたのは小学生だったとき以来かな。二人の頭上には木の葉の海。陽が照りつけはじめ、幾重にも重なり合った葉っぱの間からわずかに漏れる光がきらめく。家が近づいてくると、太陽の光に輝いてい
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