ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
早いか壷の中に体を投げ出した菌はね、『熱いっ! ひいっ! 熱いっ! ひいっ! 熱いっ! ひりひりするっ! アツッ!』そう絶叫しながら死に絶えちゃったのよ!」
 多義子は語り終えると、虚脱したように夜空を眺めていた。何か一点だけを見つめているようだった。それが星だと僕はしばらくしてから気づいた。
「長く話しすぎちゃったね」
「そんなことないよ、あっという間だった」
「ほんと?」
「ほんとだよ。微生物の世界にもいろいろあるんだね」
「そうね。……夜も明けてきたね。それと、……あと色がたいせつよね」
「色……」
「そう、色。輝く。真っ赤、ピンク、紫、青、黄色」
「デザイナーにでもなりた
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