ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
なりに悩んだとは思うんだけど。手紙を何通も父親に向けて書いてね、改心するからって許しをこうたのよ。でもね、人の悪い奴らは財産を相続できなくなったのがつらいだけだと陰口をたたいたんだ。でも、私は誓っても良いよ。当時の彼は本当に反省していたの。だけど、父も世間も彼を許しはしなかったんだ。世間は彼のかつての悪事を憎んでいたし、父親は彼を幼い頃から知ってるでしょ? だから、息子の本性も良くわきまえていたのね。彼が一時的に反省しても、またあくどいことを繰り返すだろうことをね、…… その年はね、とっても寒い秋だったんだって。そんな寒さを身に受けながら、東北地方の村に貧しい親子が住んでたんだ。父親は癌で数ヶ月前
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