ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
枝でつついていた。女性の顔を見ようとしたが、薄暗くてよく見えなかった。彼女は低い声でぶつぶつ言っている。危ない女性だと感じ、僕はうなだれて目をつぶった。不思議と怖さは感じなかった。ちっとも。
(これからどうやって生きていこうか。琵琶法師みたいになろうか。でもそれで金を稼げるだろうか……、こんなこと思ってたって家には帰らないといけない……、家までかなり遠く感じるな……どうすればいいんだろう……、今僕が考えていることはくだらないことばかりだ……、人に嫌われる。どこでも嫌われる。この世はむなしいのだから……どこに行ったって苦しいんだ。あの女だって性格の暗い、いじけた女性なんだろう)ドーンと心臓が共感し
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