ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
 
れみすら覚える。蛆虫としてうまれ私を羨望し、あるいは嫉み、馬鹿げた悦楽に浸りきりで日々を過ごしている彼らを、私は愛しているのかも知れない。その愚かさを。
 私には赤いドレスがよく似合う。

   2  うつしみに寄せる手記

 希望に満ちた眼差しで突き進む彼らに、私は毒薬を進呈する。それが彼らへのご挨拶だ。私の愛の賜物、死の美学を掻っ攫いきては、彼らの薄汚さを神々の冷水をもって洗浄してやらなければ、醜いものが生まれてきた原罪を癒してやることなどできないのだ。醜いものはこの世に存在してはならない。私がこの世界にいる限りは。私は枯葉に擬態した蛾だ。私の美しさを見抜けるものはあまりいないだろう
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