1型/瀬崎 虎彦
 
も僕はなんとなく彩の行動原理が分かっている。多分最初に(三週間前に)クッキーを作るというメールをくれたとき、彼女は本当にクッキーを作っていて、焼きあがったそれを僕のところへ持ってくるつもりだったのだろう。けれど上手に作る事が出来なくて、メールを出したことを「なかったこと」にした。それから何度か練習をしてようやく出来上がったものが、今日僕の家の郵便受けに入っていたのだ。
「あー、もうええ。あんたのありがとうは全然あかんわ。有難味がないもん」
「・・・・・・悪いね」
 でも僕は電話の向こう側で彩が得意そうに笑っているような気がした。クッキーはまだ食べていない。僕はそれを冷凍庫に入れた。そしてそれ
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