1型/瀬崎 虎彦
振動する。彩からだ。
「さっき何の用事だったの?」
「いや、用事って言うかね、そっちじゃん、メールくれたの」
え、別に特に用事ないよ。
僕は少し憮然とする。
「で、クッキー作ったの?」
「え、なんでそんなん知ってるん?あー、そうか、メールってそれか。いや、作らんかってん」
なんだかこのまま話していても時間もったいないな、と思って僕は電話を切ろうとする。でも彩がだらだらと話をして、僕は結局日付が変わる頃まで相槌を打ったりする。
それから三週間位して、僕の部屋の郵便受けに無骨なクッキーが投げ込まれている。悪戯なのかなんなのか正直心配になったけれど、ふと彩のことを思い出して、やっ
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