夏のゆかた/月乃助
よりも 自由に空を翔ける
ちかづいてくる
美しい銀のつばさ は、白い尾を引いて雲を作る
ざんにんさの みじんもないそれが、
もたらす そのために
わたしは、娘に赤い帯をしめる
それが 次の世でも目印になるよう
夫の手をしっかりと 指の
いたいほど、ちぎれるほどに、
くるったように
握り締める
声を出さず
木々も時を待ち
鳥達も鳴き終わった夏の日の
楽しさだけが 心をうずめて それだけが
庭を歩き始める
遠くに聞こえ始めた
命の音
それは、十四万の 人間の命の対価
ただ、あることなど、くることなど
だれも 思っていなかった
悲しみなど 辛酸を
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