シェドゥムのための習作/有末
ると誰かに向かって約束をしていた。まだ今なら彼女は幻のままだから話しかけるのはやめる。でももし彼女が口を開いたらそれは仕方のないことだから受け入れる。
手が、誰のものかわからない手がシェドゥムの左目を一瞬、覆ったように思えた。その手のひらには大きな大きな目が変わらずに……。
結局、その美しい一枚絵に動きを与えたのはシェドゥムのでも彼女のでもなく、シャルロの声だった。全く想定していなかった第三者の闖入にまたもや反応が遅れたシェドゥムは、快活なシャルロの絶好の社交の口実となり、時間はまたゆっくりと流れ始める。
シェドゥムは彼女の名前を知り、彼女もまたシェドゥムの名前を知った。そしてそれ以
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