シェドゥムのための習作/有末
いたたまれなくなった目を慈しむ優しい瞼が、睫毛に視界を掃かせるまで。そこにはなにかがあるがゆえに見えないのだとみなに言い聞かせるようにゆっくりと幕をおろす。そうすれば今度は本当の静寂がやってくる。それぞれに許される分だけ息をする静けさが。
彼の悪夢は恐ろしくはない。開け放された扉に拒まれつつ黄緑色のふんわりとしたドレスを着た少女の背中、不釣り合いなくらいに開いた背中を光らせ積み木のお城を作っている少女を凝視する少年を見る。ただそれだけのことだ。
シェドゥムはどこかの市民派の画家が似たような光景を描いていて、その色褪せたコピーが石の壁に囲まれたあの部屋になぜか貼りつけてあったことをよく覚えて
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