或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
とができない。でも、彼女の幼少期の頃の写真を見せてもらうたびに、若い伯母の隣にまだ猿だった頃の父がいるので、この二人が姉弟であることは紛れもない事実であるようだった。
嘘は父の姉弟関係ではなく、伯母の話の中にあった。伯母はパスポートを持っていなかった。日本はおろか、本州から出たこともないはずだと父は苦々しげに言った。土産物はおそらく恋人や友人にもらったものだろうというのが父の推測だった。僕もその推測に概ね賛成であるが、父は伯母を軽い女だとでも言うように「過去の恋人たちから」という部分を強調していたが、僕は友人からの土産であることを強調したい。とは言っても、単にそうであってほしいと思うだけで、具体
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