或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
っても、ないものがあるように見えることはないだろう」と祖父も戸惑っていたそうだ。祖父母は伯母のために男物のベビー用品を揃えてしまっていたらしく、伯母の幼い頃の写真はどれも男の子のような姿で写っている。そして、その2年後に父が生まれたときには、伯母のお古を使ったというのだから、妙な話である。
出生時の性別間違いのせいかどうかはわからないが、伯母は「あきら」という名前だった。男の子のつもりで用意した名前をそのまま無理につけたのではないかと本人はいつも疑っていたが、男の子だったら父の「真一」が伯母の名前になっていたらしい。
伯母は僕が12歳のときに死んだ。ちょうど春休みの終わりで、僕はその二日前
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