或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
 
伯母の棺桶の側にゆかりの品として置かれていた携帯電話が何度も鳴った。葬式が終わっても、電子制御の火葬場で伯母が骨になっていくときにも、骨壷に納まった伯母を父の実家につれて帰るときにも、何度も何度も伯母の携帯電話は鳴っていた。父は久しぶりに父の生家に帰ると、どさっと居間の机の側に座って、伯母の携帯をそっと開いた。
「みんな姉さんの死が信じられないんだ」
「嘘だと思ってる」「メールすれば返事が来ると思ってる」
「まだ届くような気がすると思ってる」「目の前で葬式していようが、骨を拾っていようが」
「それがすべて嘘なんじゃないかと思ってしまうんだ」
そうブツブツ呟くと、携帯を閉じた。

僕が
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