或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
 
に酒を飲んだと供述している。しかも、その男が捕まったときには、ほとんど酔いがさめていたので、飲酒運転での立件は不可能なのだそうだ。「完全な逃げ得だよ」と父は言った。「嘘つきだった姉さんは、嘘に殺されてしまったんだ」と呟いた。僕は必死で反論しようとしたが、いい具体例が見つからなかった。

翌日の葬儀にも、母は仕事を理由に来なかった。朝、父に母から電話が入っていた。形式的なお悔やみを言った後、葬式が終わったらすぐに僕を母のところに帰らせるように伝えたようだった。葬儀屋に委託された葬式は、司会進行をすべて業者に任せてあり、親族はほとんど座っているだけでよかった。お坊さんがお経を読んでいるときに、伯母
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