或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
 
とうとうと伯母がいかにして死んだかを教えてくれた。伯母は僕が部屋に入ったときに荷造りをしていたスーツケースをガラガラと引き摺って、駅に向かっていた。彼女はその二日前に仕事を辞めていた。そして父にマンションの鍵を渡していたそうだから、本格的にしばらくどこかに行くつもりだったらしい。そして、駅前の筋の一本手前の大きな交差点の信号を渡っているときに、左折してくる車に轢かれたらしい。ほとんど即死だったそうだ。ちょうどその車がそのまま直進したら警察が検問しているのに出くわすとわかった運転手が、速度を落とさず強引に左折したのが事故の理由だ。その運転手は伯母を轢いて逃げた後、気が動転したのを落ち着かせるために酒
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