或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
写真は、何だか嘘みたいにいつも通りの伯母で、涼しい顔をしてこちらを見ていた。その伯母の顔に死の気配や、悲しみの雰囲気を一切感じることはないのに、その写真を見ると何ともいえない寂しさを覚えた。それはカラー写真の遺影と黒い額縁のミスマッチのせいだったかもしれない。そして、棺桶の窓から覗く伯母の顔は、学校帰りに伯母の部屋に入ったとき、ベッドで見かけたいつもの寝顔だった。すこし化粧の雰囲気が違うのは、その化粧が伯母の手によるものではないからだろう。祭壇にはたくさんの花が置かれていて、百合が強烈な匂いを発していた。それは紛れもなく本物の花の匂いだった。
二人で伯母の前に座って、線香番をしていたら、父がとう
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