或る嘘つき女の生涯/木屋 亞万
に容易い。誰の心にも大小の違いはあれども、「嘘」が住み着いているものである。しかし、「嘘」にどの程度憑かれているかは、人によって差がある。わたしの伯母は多くの人々にとって、「嘘つき」な人間だったようだ。彼女の人生はいつも「嘘」とともにあった。
祖母は伯母が生まれてくるときに、医者からこの子は男の子だと聞いていたらしい。しかし生まれてきてみれば、女の子だった。エコーで男の子を女の子と間違えることはたまにあるらしいのだが、その逆はめったにないと医者は本当に驚いていたそうだ。医者が驚くのも無理はない。医者は確かにエコーで胎児の男性器を確認したはずなのである。「あるものがないように見えることはあって
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