失恋に溺れて/チアーヌ
年下だから転んだとか、そういうわけではなかった。それに、長いことつき合っていた妻子持ちの男もいた。
だから別に、寂しかったとかそういう感じでもなかった。わたしは仕事が忙しかったこともあり、教養が深く得るものが多い不倫相手との関係に充分満足していたはずだったのだ。
そのわたしが、なぜ、俊彦に、あれほどまでに嵌ってしまったのだったろうか。
自分でもわからない。わかれば苦労しない。理由なんかないのだ。今だってよくわからない。本当に、なぜあんなことになってしまったのだろう?
わたしが長くつき合った年上の不倫相手は、ひとことで言えば尊敬できる人だった。教養があり、仕事ができ、一緒にいて安
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