失恋に溺れて/チアーヌ
て、そして絶対にここに来ると譲らなかったのだった。
「尚美さん。あのときは、何を言ってもダメなようだったから黙って見送ったけど、あなたとはいつかきちんと話したいと思っていたから来てみたのよ。ねえ、そろそろ、落ち着いたんじゃない?」
小早川さんは、わたしの出したお茶には手をつけず、ただ静かに手を重ねて、そう話し出した。
わたしは何を言ったらいいかわからず、一瞬ためらった後、
「疲れちゃったみたいなんです」
と、小さな声で答えた。
「そう」
小早川さんは頷いた。
そして部屋を見回し、わたしを見つめ、
「でも、ちょっと安心したわ。やっぱり来て良かったわ」
と、にこにこしなが
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