失恋に溺れて/チアーヌ
」だけが残っていた。
引っ越して来たばかりのとき、何もない部屋の中に布団を敷いて、ただ仰向けに寝て天井を眺めていると、よくグルグルと回り出して、自分が床下に吸い込まれて行くような気がした。
異常な感覚だったけれど、怖いなんて感じなかった。
死ぬときってもしかしたらこういう気持ちなのかなあ、とぼんやり思った。寂しくもなく恐怖も感じない、いたって平常心だった。でも、心のどこかが麻痺している感じはした。
そう。恐怖など、今も感じない。
前まで住んでいた、恵比寿のセキュリティばっちりの15階建てマンションとは全然違う、適当に決めた木造の、もちろんセキュリティ機能なんか何ひとつついて
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