失恋に溺れて/チアーヌ
そして俊彦は、いつのまに、わたしの住んでいたマンションに居着いてしまった。
その気になれば追い出すこともできたけれど、そうしなかったのは、やはりわたしが俊彦のことを完全に好きになってしまったからだろう。でも、一緒に暮らすのは危険なんじゃないか.....そんな気は、どこかでしていた。
俊彦は、知性も教養も無かったけれど、よく気の利く優しい男の子だった。疲れた夜、家に帰ると、簡単ではあっても食事が出来ている。掃除や片付けもやってある。有り難かったけれど、それに慣れてしまうことに一抹の不安はあった。
わたしは一度も俊彦にちゃんと好きだなんて言わなかった。仕事面でも褒めたことなんか無かった
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