失恋に溺れて/チアーヌ
ですでに躓いていた。
わたしは三十二という微妙な年齢だったので、業界の若者が集まる飲み会に、時折誘われることがあった。断ることも多かったけれど、気が向けば出席していた。
俊彦と話すようになったのは、そんな飲み会の席でだった。
「ねえ町村さん、俺、また東谷さんに怒られちゃいましたよ。お前は黙ってろって。俺は普通のこと言ったつもりなのにさあ」
俊彦は勝手に、わたしのことを優しい人だと思い込んでいたらしく、飲み会の席で同じ会社の上司に対しての愚痴を語ったりしていた。
「それはそうじゃない?だって俊彦君が言ってることは、ただの小手先の技術面のことなんだもん。そんな専門学校で習ったようなこと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)