餓鬼が嗤う/熊髭b
 
した





ハシバミの房の陰が深く地面に塗られていた

しばらく房の陰だけが確かに思え
房の陰から躍りだしてくるものを期待した

通行人たちは

不思議そうに裸地に横たわる男の姿を
さして気にもせず
無言で通り過ぎていった
一様に寒い冬にうんざりした様に
コートの襟を深くたてているそれは
まるでコートの襟をたてるしか能のないもののように
造形はあっても創造が消えた街に手向けられた
夕刻の実存に
裏切られ続けた事実だけが残された





「さて」


小さな声で
つぶやく相手も見つけられず
今度こそ本当に紛れ込むことができる
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