餓鬼が嗤う/熊髭b
 
きるだろうか
何処に?
それはいったい誰のところに

古の書物は云う

求めることをやめなさい
愛しなさい 愛しなさい


がしかし
母さん その前に 避難訓練ができません 




アパートの階段を昇り
いつもの扉を開けると
まるではじめからそうであったかのように
そこには生活があった
しんとした室内には
とうの昔に枯れてしまったハシバミらしき残骸と
ポルノ女優の消毒済みの笑顔のポスターが
家主を静かに迎えてくれた
いつもの風景に家主のほうがくたびれているようだった





どこかで草の匂いがした気がもするが
それは気のせいだったのかもしれない





TVをつけると 
箱の中では餓鬼が嗤っていた


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