東京タワーで彼女が泣いていた事を僕は知らない/虹村 凌
は僕に愛されない事を知っていた。特別な感情は無かった。ただ、少し特殊な位置付けの友人であったのだ。それは、興味と欲情にとって都合の好い言い訳にしか過ぎないかも知れないが。
彼女は、彼女にとって僕は特別な存在だったと言った。だから、彼女といる三日間は、かりそめの恋人として夢を見せる約束をした。そして僕は、興味と欲情を満たす代わりに、彼女に彼女が望む夢を見せる事を約束した。
果たして僕は、彼女に夢を見せられたのだろうか?彼女の言う「最低」な存在であり続ける事が出来たのだろうか?上手く笑えていたのだろうか?中途半端では無い優しさを見せられただろうか?振り向かない事でその約束は鮮やかに締めくく
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