東京タワーで彼女が泣いていた事を僕は知らない/虹村 凌
 
かれていた。もしかしたら、僕が夢を見せていたのでは無く、夢を見せてもらっていたのかも知れない。僕が物語を読んだのでは無く、僕が物語を読んでもらったのかも知れない。最後まで優しかったのは彼女だったのだろう。最後まで僕を正しい距離に置いてくれたのは、彼女だったのだろう。彼女は僕を愛していた。僕が彼女を愛していない事を知った上で、彼女は僕を愛していた。だから、彼女は無駄に僕を苦しませる事無く、僕を適切な距離に置いて、僕を冷静にさせてくれていた。まぎれも無い、愛だった。彼女は僕を愛していたのだ。本当に、愛していたのだ。
 その瞬間に、僕の中に後悔と懺悔の意識が溢れ帰った。だが、彼女の「自分を責めないで」
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