夫婦極道/salco
 
その頃母は居室にて、少女の
友に泣き伏してをりました。
 新婦の名は世志江、新郎は川嶋徳三郎と申す与太者で、同心の柄がドス
で結んだ縁なれど、やはりそこはをんなとをとこ。睦み合うほどに馴れ合
うて、夫婦になって行きました。
 そうして幾年、ちり紙の始末の間に次々と出来たのが私ら七人の子ども
でございます、二人は早世してをります。

 父は子煩悩な人ではありましたが、指切り指を詰められて男が七くせ治
るものじゃなし、卒中で舅が死んだ霜月からは元の木阿弥。仕事もせず、
女郎と妾、酒に長半おいちょかぶ、見る見る家が傾ぎ出す。
 手代の次にはいつの間にやら軸も壺も着物も消え失せて、ま
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