夫婦極道/salco
、まるで竜虎の
如く夜な夜な吼え合い組み合うふた親を、私らは抱き合うて、恐ろしさと
哀れさに震えて見てをりましたよ。
その度に百燭光が大きく揺れて、ふたりの影が伸びたり縮んだり。此方
唐紙、彼方障子でシーソー乗りのお化けのよう。
そうして出て行った父が表の格子戸を叩きつける音で、鬢のほつれた母
は初めて目覚めたように泣くのでした。お母ちゃん泣いちゃ厭だと私らも
、初めて茶の間へ飛び出すのです。
何が子煩悩なものか、あの人は今にお前達の身上まで食い潰してしまうの
だから
長姉から次兄までが学童疎開の前の晩、私らを集め、母は云うたのです
。そうして庭の片隅よ
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