研ぎ澄まされた湖のために/錯春
 

水面は凍りながら燃えている
焔(ほのう)がギロギロと私を睨む
それは水だろうか?
あれは焔だろうか?
私は
私の研ぎ澄まされた湖のことを想った
悴(かじか)む指先で言葉を千切った
いつしか記憶は
塊になり
破片になり
粒になり
粉になり
砂になった

私は
土と混じった魂を掴み
湖と混じった魂を掬い
どちらがどちらかわからなくなり
どちらも私のものではなかったと
そこでようやく気付いた

砕いたものを寄せ集めても
私の研ぎ澄まされた湖は煌めくばかり
戻せはしない産み出せもしない

私は
私の研ぎ澄まされた湖を見る
いつものように
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