研ぎ澄まされた湖のために/錯春
に
慈愛と疚(やま)しさを蓄えて
わなわなと震えながら
指の隙間から見る
私の
私の研ぎ澄まされた湖は燃えている
今も燃えている
あれからずっと
凍りついた泥の裂け目から
舌先で訪れた女の足首が突き出している
私は
私の研ぎ澄まされた湖を
どうすることも出来ない
そもそも美しいものに
何か出来るわけがない
私は
記憶を軽んじ
言葉を失くした
最後の最後に
聴こえなくなった耳と
虫歯だらけの乳歯と
シミだらけの眼球が残った
私の研ぎ澄まされた湖のために
見届けることしか出来ない
私は
見届けることが出来る
私の研ぎ澄まされた湖を
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