マテバ、ウチヌカレル/虹村 凌
いたのは、醜悪な森島の恋人の存在だ。どんな人物なのだろうか?下衆い好奇心が頭をもたげ、僕は事務所に向かって茶髪ロン毛の鹿野に行く旨を伝えた。
醜悪な森島の恋人が醜悪であるとは限らない。その可能性もゼロでは無いが、それでは面白味が無い。所謂「美人」では疑念の余地しか思い浮かばない。茶髪ロン毛の鹿野も妻帯者であるが、醜悪な森島の恋人が美人であり茶髪ロン毛の鹿野との存在としての匂いが近しかったりしたら、それほどつまらない話は無い。それは森島のドラマでなくてはならない。歪な好奇心が、僕の森島に対する愛想を良くさせた。少しだけ驚いたようにしていた醜悪な森島は、それでも何時ものように仕事を続けていた
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