マテバ、ウチヌカレル/虹村 凌
の滑舌の悪い男だった。翌日に面談した店長は、やけにフランクな態度で、即日で採用が決まった。
「志村君いいねぇ、うん決めた。採用するよ」
店長はそう言って僕の方を叩いた。
翌日から店に出勤した。店長は店員やアルバイトと会う度に、新人の僕を事細かに紹介して、お互いを印象づけさせてくれていた。その流れの中で、僕は彼に出会った。
その男は、バットマンの映画に出て来るペンギンに良く似た、醜く太ったせむし男だった。歳の頃は30半ば、薄くなった毛髪をべっとりと後ろになで付け、その体型の男特有の体臭を纏い、小さな唇を常に湿らせて、腫れぼったい目の上に指紋だらけのメガネをかけている彼は、僕が女
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