マテバ、ウチヌカレル/虹村 凌
 
不協和音を鋭角で反射させながら鼓膜に突き刺さる。
 トイレに入るとそのまま吐いた。何も食べていない所為で、ひとしきり吐いても、ネバついた黄色い液体が、口元からだらしなくぶら下がるだけだった。洗面器には幾つかの黄色いシミが垂れ落ち、すえた匂いを放っていた。
 ふと見上げた鏡の中の僕の目は、血走った眼球内で毛細血管が切れたのか、すこし緑がかって見えた。口をゆすいでから、煙草に火をつける。メンソール成分で口の中が冷やされる所為か、胃液の味が色濃く再現された。ツバを吐き捨てると、幾分マシな気分になったので、ようやくの事でトイレを出た。


 部屋に戻ると、みんなが僕の帰りを待っていたかのよ
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