マテバ、ウチヌカレル/虹村 凌
のように一斉に僕を見た。
「志村君、遅いよ!大丈夫?紹介するね、これが僕の恋人の」
森島が嬉しそうに早口で説明するのを聞かずに、僕は彼の横にいる女性を見ていた。まるで体温を感じさせない白い肌は、まるでおとぎ話に出て来る魔女のようであったが、その肌にはシワひとつ見当たらず、なめらかな氷のようであった。その氷のような肌はまるで炎のように鋭く、僕の目を射抜いている。
柔らかい微笑をたたえた彼女は、少しだけ頭を下げて挨拶をした。
「こんにちは、志村さん。はじめまして」
聞き覚えのある声が、えぐり取る様に鼓膜に潜り込んできた。
「はじめまして」
僕は座ると、ゆっくりと目を閉じた。醜悪な森島とその彼女が、並んでいるのを見て、黄金費に近いバランスを感じた事を後悔しながら。
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