餃子男/salco
 
別れたからで、シーツの海原はおろか、プール
サイドにすら至らず潰えたのだ。

「ね。キスして?」    
3度目のデートの別れ際、深夜の児童公園で顔を仰向けて来た。そこまで
は行ったのだ。柔らかな唇は夢心地のしとね、甘やかな舌は天国への導き
だった。
「ね? キスして」
胸に深い谷間を見せて顔を寄せて来た。健太の唇は再び優しい唇を捉え、
舌は懐かしい舌と抱き合う。『涙が出そうだ』健太は思った。
去年の7月。秋の大会へ向けた強化練習で忙しくなり、じれた香織は可愛
らしく若く、自分を待ってはくれなかった。付き合って2か月目に入った
ところだった。
だから夢とは知りつつ、1秒で
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