彗星が墜ちた/エスエル1200
 
く歪んだ音色は彼の歌を夜に溶かして二人を蒼色に染めた。
そして心の深層のどこかにある光の届かない湿ったヒダを激しく揺さぶった。

その夜、彼は僕と出会って以来初めて、”彼女について”話さなかった。



          *



日曜の午後、僕と彼女は市街から少し離れた高架下に居た。
二人で死んだ彼女の弔いをすることにしたのだ。
ブリキ製の大きめの灰皿に巻貝を新聞紙で包んで置いた後、
セブンスターの袋から使い捨てのライターを取り出して彼女に手渡した。

「ここからはひとりでやりなよ」

というと、頷いて灰皿のすぐ傍にしゃがみこんだ。

炎はじわじわと新聞
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