彗星が墜ちた/エスエル1200
新聞紙の表面を焼け焦がし、次第に激しく燃え盛った。
黒い燃えカスが二人に巻きつくように舞い散った後は、
茶色く焼け焦げた巻貝だけが灰皿の上に残った。
どうだった?と尋ねたが何も答えずに、
白く細い指先で朽ちかけの貝殻を手にとって静かに歩き出した。
おそらく僕たちはこれからもずっと心を通わせることはないだろう。
あのとき、黒い燃えカスが舞い上がった瞬間、
透き通ったもう一人の彼女が僕の身体をすり抜けていくのを見たのだ。
そして彼女がもう二度と取り戻すことできないその表情に、
僕の全ては奪われてしまったのだ。
彼女が去った後、咽返りながら残りのタバコを全部吸い切り、
空き
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