彗星が墜ちた/エスエル1200
カバンから桃色の巻貝を取り出し、こんなふうに答えた。
「ここに入ってしまえば良いんだよ」
「だけどね、一度入ってしまうと生きて出て来れないの」
「ねえ、私はもう104回も死んだんだよ」
*
「気に入ってたんだけどなあ」
彼は壊れたエピフォンを撫でながら寂しそうに呟いた。
相手の思い入れとかそういうのを考えずに、ただとても似合っていたという理由から
「残念だよね」
と答えたのだけど、彼は最初から受け答えを求めていなかったようで
赤茶けたボディを静かに膝の上に乗せ器用そうな指でコードを弾きはじめた。
美しく歪
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