【句評】 桃破壊する少女/ふるる/古月
、真っ白な心象でもある。
鍵盤の硬質な響きがあり、余韻が続き、その後に訪れるであろう必然の静寂に向けて限りなく近づいていく、それが恐ろしくて耐えられない。音色はいまにも途絶えて終わる。いま終わる。いま終わる。いま終わる。狂気は膨れ上がっていく。そしてふっと世界は静まり返り、音もなく終わりが鳴り響く。後には破壊された桃と、少女が残るのだ。
桃破壊する少女、というパワフルな字面にはユーモラスさもある。白い鍵盤とくれば、当然破壊するべきは鍵盤ではないのか、と思われる向きもあるだろうが、ここに取り合わせの妙がある。
まったく鍵盤と関係ない桃の存在は、「鍵盤と少女」という端正で硬質な世界の異物である。
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