【句評】 桃破壊する少女/ふるる/古月
 
る。そして、桃は「食べられる」「熟す」「腐る」といった、生々しい肉のイメージを、その端正な世界に持ち込む。絵に書いたような薄っぺらい「少女」という記号に肉体が宿り、それが破壊されるのだ。
白い鍵盤は潔癖にも通じるかもしれない。潰れた桃から飛び散った果汁が白い鍵盤を汚し、そのあと少女はどうするだろう。想像を巡らせてみるものの、なにもかもが空白に飲み込まれていくようで、何も考えられなかった。全ては一瞬の空白と、そこで鳴り続けるこの世ならざる音色だけが知っているのかもしれない。
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