ヘル・ヘイ・ブン/影山影司
 
だ。救いは広く蔓延し、彼の国で銃の使用法といったら、護身や強盗に使うよりも随分多くがそれに使われていたのだ。
 ヘルヘイブンがあれば、もう一夜漬けの試験勉強で銃器所持許可証を取得して、寝不足の足で銃器店に立寄って「スカっとぶっ放せるヤツをおくれ!」なんて言わなくていいんだ! 素敵な論理がそこにあった。素敵な倫理もそこにあった。すぐさま直行便が、パックツアーが、弁護士が、権利が、整えられた。

 もちろんヘルヘイブンは無法地帯ではない。あくまで、『自殺権を認める』のであって、それは法の内の行いなのだ。苦しみながら生きる、というヘル(Hell)からのヘイブン(避難所)であるのだから、むしろそこで
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