借りた詩集 西條 八十全集/ふるる
ビ寂=さび}しい旅を
私(わたし)はいままでにしたことが無い。
ふと、顧(ふりかへ)ると
私は恋人の顔の上を
あてどなく彷徨(さまよ)つていた。
(西條 八十全集第一巻 詩集詩集 「砂金」より ※「恋」が昔の漢字だったんですが、出ませんでした)
「蝶」
やがて地獄へ下(くだ)るとき、
そこに待つ父母(ちちはは)や
友人に私は何を持って行かう。
たぶん私は懐(ふところ)から
蒼白(あをざ)め、破れた
蝶の死骸を取り出すだらう。
さうして渡しながら言ふだらう。
一生を
子供のやうに、さみしく
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