カバとキリカ/松本 涼
なカバが走ってくるのよ。」
「・・カバが?どうして?」
「きっとカバは温泉が大好きで、その匂いを遠くから感じたのね。」
「・・ふーん。」
「それでね、あたしはびっくりしちゃって、ただ近づいてくるカバのことを見ているしかなかったの。でも近くにいたお父さんがね・・」
「お父さん?」
「そう、石器時代のあたしのお父さんがね、『あぶない!』ってそばにあった大きな石を持ち上げて、あたしに近づいて来てるカバに向かって投げたの。」
「・・それで?」
「見事その石はカバに命中して、カバはドスンて音を立てて倒れたのね。それで何だかあたしはカバの事が急にかわいそうになっちゃって、お父さんに『ねえ、この
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