話しかける五月/小池房枝
もゆっくりとしか動かない雲たちなのにそれぞれの向き
地球照あわい光を内側にたたえて月は遠い金魚鉢
イソギンチャク触手に指を絡めさせそれからそっと引き抜く感触
エンジンに火の息通わせ身じろいで震えて船は埠頭を離れる
早苗ではなく麦でもなくイタリアングラスの上を吹き渡る風
鳥はもうお帰り海に泊まるのか夜ごと異なる波のしとねに
五月から六月にかけて落日は山並ごしに多摩川を渡る
キウィ棚は黄色いキウィの色をした一重の可愛い花で鈴なり
タンポポにちっちゃなハチが潜ってた見渡す限り何色の世界?
水晶をもてあそびながら雨音に沈んだ世界のバラードを思う
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