カニミソ2/番田
って。俺の鼻の穴はゴミ箱じゃない。それに俺は魚を釣りにきたのであって、蟹じゃないんだ。できれば巨大なヒラメが釣りたかったんだ…。うちの親父は、寿司が握れるから何匹か釣っておけば、縁側にさばいてもらえただろうに。」
と彼の返答が返ってきた。
私は、不服も言わずバケツをトランクに入れるとハンドルを握り、車を出した。辺りには朝来た時の車はまばらで、上半身裸のビーズの稲葉似の男ももうそこには存在しなかった。タムタムという漁船の音が時折響いている堤防の角を曲がって、16号線にぶつかる交差点の手前までやってきた。この辺りは昔は私が営業のルートセールスで回っていた事のある地帯だった。だから近道も知っていたし
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