カニミソ2/番田
雨はまだやってこないらしかった。私だけが蟹をとり続けていた。友達はワゴンの中で寝息を立てている。カラフルなポールスミスの紙袋は、まだ彼の眠りを妨げているはずだった。青いバケツの中に一杯の蟹が溜まったので、私は仕掛けの缶を取り込み、余った肉を岸壁から蒔いていく。水平線上に、おぼろげな太陽が沈みかけている。
「おいそろそろ帰るぞ。今日はしこたま蟹がとれたからな、蟹鍋でも、蟹ミソでも、蟹だよ。なんでも食えるし、しかも無料。蟹は何も言わんだろう。生きている蟹と何かしたいのならば、バケツに入っている今しかないぞ。」
と、私の友達に叫ぶ。
「バカやろう、訳のわからない縦筋の紙袋を鼻につめこみやがって
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