ねこの進化論/salco
それでもいつか、居住環境の人為的変化によって故郷の同朋が全滅した後
も、ケチなサファリパークや陰惨な檻の中でビタミン添加の死肉を投げ与
えられるまま弛緩し切った生を日がな横たえて幾百代と過ごす内に、何ら
かの小型化がライオンちゃんの頭蓋の内外にもたらされる時が来るだろう
か。
その昔、ジョイ・アダムソンという養母に対する認識を野生本能拡大の中
にも強固に保ち続け、猛獣社会との境界線上に長く踏みとどまった雌ライ
オンのエルザという伝説的個体例とは異なり、かつて人類の祖先がそのひ
弱さ故に四足歩行と丸腰から脱却し、この地球上で唯一「食えない」動物
になりおおせ、捕食者としての玉座
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