地軸/捨て彦
人が秘密組織にさらわれて殺害されたことがニュースになっていた。
地下で暮らし始めて五年ほどすぎた。地下は思いのほか過ごし易いものだった。おれは地下の暮らしに何の不満も感じた事はなかった。そんなある日、地上に出てみようという考えがふと思い浮かんだ理由は生まれもっての単なる好奇心からだった。おれは地下から地上に抜ける唯一の交通手段であるとても長いハシゴを五時間かけて上りきった。地上に出た頃にはおれは大層疲弊しきっており、そんな状態のところを、ハシゴを上りきった地上でここぞとばかりに待ち伏せをしていた第二の巨大な秘密組織の兵に拉致された。もう抗う力は残っていなかった。
第二の巨大な秘密組織が利用する
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